ある記事に「人間の寿命が伸びることは、長く生きることそのものが原因となる病との闘いがはじまる」と書かれていました。
どういうことでしょうか?
寿命という言葉には二つ意味を持つものがあります。
平均寿命と健康寿命です。
平均寿命とは、人が生存する平均年数のこと、つまり自立した生活が送れなくても生きている期間を意味します。
また、健康寿命とは、健康上問題なく、日常生活が制限されず生活できる期間のこと、つまり人が自立した生活を送れる期間を意味します。
令和の日本社会では、超高齢化社会が進み70代でありながら、90代の両親を介助されている方が多くいらっしゃいます。
平均寿命が伸びたとしても、健康寿命が伸びないと介助者の不健康な状態へのリスクが高まり、広範囲で各世代にも広がる可能性があります。
2019年日本では健康寿命と平均寿命の差が
男性の平均寿命81.41歳、健康寿命72.68歳、その差8.73年(約8年9ヶ月)
女性の平均寿命87.45歳、健康寿命75.38歳、その差12.06年(約12年と22日)と発表されました。
男女を合わせた平均を見てもその差は、約10年あり、その期間は医療機関や家族などの手助けが必要となります。
米国イリノイ大学Sジャイ・オルシャンスキー博士が発表した論文では、この期間を「レッドゾーン」と呼び、平均寿命の延長を目指すよりも、レッドゾーンをいかに短くするかが重要だと発表されました。
レッドゾーンでは、加齢に伴い疾患が高い確率で次々と発症しやすく、平均寿命を短くしていることも問題視されています。
日本では以前より「健康寿命の延伸」を厚生労働省も勧めており、現代人の生活習慣の見直しが重要視されています。特に予防対策として、現在の中高年世代である40〜50代の健康な状態を保つことが必要と言われています。働き盛りである40~50代で健康状態が悪化し、健康寿命を短くする要因となる病気になることが多いことも現代では深刻な問題となっています。(この事についての詳細は次回以降で紹介していきたいと思います)
例えば、日本人の死因の3割を占める心疾患や脳卒中の危険因子は、高血糖や高血圧の症状、LDLコレステロール値の上昇などがあげられ、その要因はメタボリックシンドロームや脂質異常症など生活習慣の乱れから起こるものが多いと言われています。
健康の基準値と個人の検査数値には、年齢に伴い個人差が大きくあらわれることがあります。
健康診断で基準値内に入っているのかだけでなく、自分の数値を定期的にチェックし、両親の既往歴と家族の健康状態を把握すること。自分の健康状態をモニタリングすることで身体への異常や変化に素早く気づき、自覚症状がなくとも客観的に健康状態を確認できる方法を医師や専門スタッフとともにオリジナルガイドラインをつくることが大切であると考えられます。
健康寿命を伸ばすため予防医学としても生活習慣の改善が重要であり、ライフプラン(目的)と近い未来の目標と準備のために運動、食事、睡眠のプログラムや行動の提案と修正を繰り返しながら運動習慣(トレーニングプログラム)を始めることが「レッドゾーン」を短くする重要なポイントとなると考えられます。
◆参考/引用
・Newton別冊「人生100年を乗り切るための科学的に正しい体の維持の仕方」
・オムロンヘルスケア株式会社 健康コラム VOL.187
・厚生労働省 第16回健康日本21(第二次)推進専門委員会 資料3-1
・S. JAY OLSHANSKY 「FROM LIFESPAN TO HEALTHSPAN 」10.1001/JAMA.2018.12621
・日本臨床検査医学会 臨床検査のガイドライン 基準範囲・臨床判断値
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